【 EPO 】
(1)利用可能なPPHの種類
EPO はグローバルPPHには未参加であるが、IP5PPHに参加している。JPO を含む 五大庁(IP5)の成果物を利用して、以下のPPHを申請することができる。
・通常型PPH
・PPH MOTTAINAI ・PCT-PPH
(2)PPHの申請要件22
(i)PPH試行プログラムへの参加申請がなされた欧州出願と対応する出願は、他の五 庁に出願された対応する国内出願であっても、五庁の一つが国際調査機関(ISA 及び/又は国際予備審査機関(IPEA)であった対応する PCT 出願であっても、
優先日又は出願日のうち、最先の日付が同一であること。
(ii)対応出願が、国内出願を審査する庁、ISA及び/又はIPEAしての五庁の一つ によって特許可能と判断された請求項を有すること。
(iii)PPH試行プログラムへの参加申請を行う欧州出願の全ての請求項が、先行審 査庁(OEE)の対応出願において特許可能とみなされた請求項と十分に対応して いなければならないこと。
(iv)IP5PPH試行プログラムへの参加を申請する欧州出願の実体審査が開始されて
いないこと。
(3)PPH申請書類23 (i)PPHの申請書。
(ii)請求項の対応についての申告。
(iii)PPH申請の基礎となる特許可能な請求項を含むOEEの対応出願に対する、
入手可能な全てのオフィスアクションの写し、及び EPO の公式言語の一つによ るその翻訳文、又は PCT 出願の国際段階における最新の審査成果物である、入 手可能なWO/ISA又はPCT第2章の請求がなされた場合にはIPERの写し、
及びEPOの公式言語の一つによるその翻訳文。
(iv)特許可能な請求項の写しとEPOの公式言語の一つによるその翻訳文。
(v)上記(iii)における OEE のオフィスアクション又は国際段階成果物におい て引用された特許文献以外の全ての文献の写し。
22 特許庁「五庁間における国際段階成果物及び国内の審査結果に基づく 特許審査ハイウェイ試行プログラム
(仮訳)」http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/pph_epo/pdf/nihongo/nihongo_jpo_epo_moushide.pdf
(最終アクセス日:2015年3月9日)
23 前掲注22参照
EPO
(4)PPH申請後の取扱い24
要件を満たすと、IP5PPHの申請が認められ、当該欧州出願の早期での実体審査が行わ れる。PPHへの参加の申請が要件の全てを満たさない場合、出願人は通知を受け、申請の 不備が指摘される。出願人は申請の不備を修正する1度の機会が与えられる。申請が修正 されない場合、当該出願はPPHが適用されず、出願人はその通知を受け取る。PPHの申 請が認められると、当該欧州出願は早期審査が行われる。なお、PACE(Program for accelerated prosecution of European patent applications)としての状態が類似的に適用 される。
(5)PPHの利用件数
2014年6月末時点において、JPOを第一庁あるいは先行庁としてEPOに申請された 通常型PPHの件数は累計1,860件、PCT-PPHの件数は累計736件であった25。
(6)統計情報
EPO でPPHを利用した案件の特許率(%)、拒絶理由なしでの特許率(%)、PPH 申 請からファーストアクションまでの平均期間(月)、PPH申請から査定までの平均期間(月)、 オフィスアクションの平均発行回数(回)などについて、EPOは公表をしていない。
(7)国内ユーザーのPPHの利用について
(i)PPHの利用目的
EPOでのPPHの利用目的を調査した。
国内ユーザーへ行ったアンケートによれば、EPOでPPHを利用する理由で最も多かっ たのは、回答者62者中42者(約68%)が選択した「早期審査をしたかったから。」であ った。次点で38者(約61%)が選択した「拒絶対応費用の削減をしたかったから。」であ った。「特許率を向上させたかったから。」は20者(約32%)が選択した(図III-3-EP-1)。
この順番の傾向は、国内ユーザーがPPHで感じているメリット(図III-2-4参照)と同 様であり、PPHのメリットとEPOでPPHを利用する目的とは対応しているといえる。
42 (67.7%)
20(32.3%)
38(61.3%)
0.0%
0.0%
早期審査をしたかったから。
特許査定率を向上させたかったから。
拒絶対応等の費用の削減をしたかったから。
代理人(特許事務所等)に勧められたから。
その他。
図III-3-EP-1 EPOでPPHを利用する目的(N=62、無回答=159)
24 前掲注22参照
25 JPO「PPH Portal Site」http://www.jpo.go.jp/ppph-portal/statistics.htm (最終アクセス日:2015年3 月9日)
EPO
(ii)PPHの利用に伴う新たな負担
EPO でPPHの申請をする場合、通常の案件(PPH を利用しない場合)と比べて新た に負担となる点が何なのかを調査したところ、回答者42者中19者(約45%)が「申請 書類の作成」を選択し、24者(約57%)が「申請要件の確認」を選択した。一方、「案件 の管理」を選択した回答者は8者(約19%)であった(図III-3-EP-2)。その他としては、
米国と同様に「代理人費用が負担である」(石油石炭・プラスチック・ゴム・窯業)や「書 類準備のためのコスト増」(電気機械製造業)という声が聞かれた。
19(45.2%)
24(57.1%)
8(19.0%)
16(38.1%)
3(7.1%)
申請要件の確認 申請書類の作成 案件の管理 代理人への指示 その他
図III-3-EP-2 EPOでPPHを利用した際に新たに発生する負担(N=42、無回答=179)
また、案件の管理の負担について詳細を質問したところ、次の意見が挙げられた。
・代理人から PPH に係る書類が送られるため、やりとりが増えてコストや人件費も増 加する。(輸送用機械製造業)
・PPH申請の受理までの期間が長く管理しづらい。(化学工業)
・通常の出願と区別する管理をするための負担がある。(鉄鋼・非鉄金属製造業)
・PACE申請案件として管理する。(電気機械製造業)
(iii)PPHの利用で困った事例
EPOでPPHを利用した際の困った事例について調査した。
最も多くの回答者が選択した困った事例は、通常型のPPHでは回答者37者中17者(約
46%)が選択した「PPH であるにも関わらず、独自の審査をされた/しているように感
じた。」であり、PCT-PPHでは回答者25社中7者(28%)が選択した「早期に審査が着 手されなかった。(オフィスアクションに時間を要した。)」、「オフィスアクションの回数が 想定よりも多かった。」、「PPHであるにも関わらず、独自の審査をされた/しているよう に感じた。」の3つ(同率)であった。通常型のPPHでは、次点で回答者15者(約41%)
が「早期に権利化ができなかった。(査定までに時間がかかった。)」を選択していた(図
EPO III-3-EP-3)。
この結果を、PPHのメリット・デメリットの観点から検討する。本調査研究において、
回答者が選択した PPH のメリットは、上から順に「早期に審査結果を得られる」、「オフ ィスアクションの回数を減らせる。(拒絶対応費用を削減できる。)」、「特許率が向上する」
であった。これに対し、EPOで困った事例として挙げられたのは、オフィスアクションの 内容やオフィスアクションまでの期間が遅いというものが多かった。特許率が向上しない ことを問題とした回答者は、通常型のPPHで37者中2者(約5%)、PCT-PPHでは25 者中 0 者(0%)であった。このことから、「PPH を用いても早期にオフィスアクション を受けることができず、また、オフィスアクションの内容にも不満があるものの、最終的 には特許査定は得られている。」というユーザーの意識があることがうかがえる。
なお、米国の結果と比較すると、「早期に審査が着手されなかった(オフィスアクション に時間を要した。)。」及び「早期に権利化ができなかった(査定までに時間がかかった。)。」 を選択する回答者の割合が高い。回答者の母数には差があるものであるが、例えば、通常 型のPPHでは、「早期に審査が着手されなかった(オフィスアクションに時間を要した。)。」 を選択したのは、米国で約 16%なのに対し、EPOでは約32%である。「早期に権利化が できなかった(査定までに時間がかかった。)。」を選択したのは EPO で約 30%なのに対 し、EPOでは約41%である。このことからも、EPOでは早期審査を受けることができて いないと考えるユーザーの意識がうかがえる。
0.0%
4(10.8%)
12(32.4%)
15(40.5%)
9(24.3%)
0.0%
17(45.9%)
2(5.4%)
8(21.6%)
0.0%
PPHの申請が受理されなかった。
申請の準備が手間であった。
早期審査着手がされなかった。
(オフィスアクションまでに時間を要した。)
早期に権利化ができなかった。
(査定までに時間がかかった。)
オフィスアクションの回数が 想定よりも多かった。
PPHの運用がガイドラインに沿っていなかった。
PPHであるにも関わらず、独自の 審査をされた/しているように感じた。
特許査定率が向上しなかった。
特に困ったことはない。
その他。
(a)通常型PPH
EPO
0.0%
3(12.0%)
7(28.0%)
6(24.0%)
7(28.0%)
1(4.0%)
7(28.0%)
0.0%
8(32.0%)
0.0%
PPHの申請が受理されなかった。
申請の準備が手間であった。
早期審査着手がされなかった。
(オフィスアクションまでに時間を要した。)
早期に権利化ができなかった。
(査定までに時間がかかった。)
オフィスアクションの回数が 想定よりも多かった。
PPHの運用がガイドラインに沿っていなかった。
PPHであるにも関わらず、独自の 審査をされた/しているように感じた。
特許査定率が向上しなかった。
特に困ったことはない。
その他。
(b)PCT-PPH
図III-3-EP-3 EPOでPPHを利用した際に困った事例 (a)通常型PPH(N=37、無回答・スキッ プ=184)(b)PCT-PPH(N=25、無回答・スキップ=196)。
また、PPHの利用に際して、具体的な困った事例を質問した。
■ PPHの申請が受理されなかったケース
・PCTからEPOへ移行して早期に権利化をしようとした際、WIPOからEPOへの移 行通知が受理されていないことを理由として PPH(及び PACE)の申請ができなか った。そのような運用は聞いたことがなく、また明文化されていないので、現地代理 人を通して審査官に確認したが、内規として受理しないことになっているようであっ た。(化学工業)
■ ファーストアクションまでの期間が長期化したケース
・EPOでは他の諸外国と比べ審査自体に非常に時間がかかるが、PPHを申請しても例 外ではない。ファーストアクションは PPH 申請なしの出願に比べ早くもらえたが、
その後の審査が遅すぎて申請から2年が経過しようとするがサーチレポートを1回受 けたきりである。PPHの意味がない。(石油石炭・プラスチック・ゴム・窯業)
・サーチレポートの発行時期が通常と同じであり、かつ、その後しばらく音沙汰がない。
(その他の製造業)